設立趣旨

 

3月11日の東日本大震災以降、 被災した岩手、宮城、福島の芸術文化活動は危機に直面しています。多くの作品や記録が失われ、ギャラリーやホールなど表現や鑑賞の場が失われ、なにより人 の命が失われています。生き残った私たちの多くも、先の見えない不安に疲弊し、芸術に揺さぶられるような心が失われています。それは、芸術文化のみの問題 ではなく、広範囲にわたる経済や社会機構、そして土地と人そのものが大きく傷ついている現状において、私たち東北の人間がこれから新たな生を営んでいくための、重要な何かが危機にさらされているのです。

その一方で、芸術による癒しを、あるいは、既存の制度や価値観ではとらえきれない過酷な現実を受け止めていく方法を探る人々が、また、被災地で奔走している芸術家たちがいます。芸術は決して衣食住の足りた環境がなくとも、あるいは、そういったものが十分でないからこそ、切実に必要とされることがあるという 事実を私たちはこの震災のなかであらためて知りました。この数十年、ニュースとして消費される時間感覚でしか災害をとらえてこなかった日本社会では、あたかもインフラが戻れば人間は生活していけると思い込まされてきましたが、これほど長く続く被災生活を通じて、電気や水やガスと同じように、感情の共有や人とのつながりがライフラインのひとつであることは、真剣に考えなければならない課題のひとつです。

ただ、それらインフラやライフラインと言われるものの多くを、行政や市場、あるいは中央といったものにあずけて自分たちの生活を築いてきたことも認めざるを得ません。与えられたシステムのほころびが露わになった今、私たちはあらためてこの土地に根ざした生を営めるように、あずけていたものを地域や私たち自身に取り戻す必要があるでしょう。そのためには、まず私たちの感受性と表現力を、共感の力を磨く必要があるでしょう。

この数十年につくられた短い歴史がそうだったとしても、本来、東北は大都市のための単なる供給地ではありません。それぞれが豊かな生を育む土地で、この深い傷を癒し、ここで生き、そして、次の世代の心をはぐくむことができるはずです。そのために、ここに住む私たちと、それを応援してくれる多様な手によって、東北の芸術文化を支える基盤をつくることが必要だと考えています。

 
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